茶席には「掛物」「花入」「香合」「釜」「風炉、敷板」「水指」「茶入」「薄茶器」「茶杓」「茶碗」「出帛紗」「蓋置」「建水」「菓子器」「干菓子器」「炭とり」「羽ぼうき」「火箸」「灰さじ」「灰器」という道具がある。
 また、これらの道具には千家の家元が必要に応じて諸道具を造らせている職方がある。この職方は十職と呼び、十職の道具は特に大切にされている。
<掛物>
 茶席の床の間に掛ける掛軸のこと。道具の中でも最も重要とされるものでその日の主題の中心となる。掛け物には墨跡(有名な禅宗の僧侶が書いたもの)、色紙、短冊、消息、唐画、古画、家元の字句、画賛などがある。
 また、茶の掛け物は全て表具をして使われる。今日の表具は、宋から伝わった方式と日本で仏像等の表具を融合して作られた。
 
※参考
色紙:唐時代の染紙(そめがみ)。日本でも奈良時代にみられ、一枚の色紙として書かれるようになったのは室町時代から。

短冊:懐紙を縦に切ったもので鎌倉時代末期頃から使われ、僧侶や公家衆のものなどが好んで使われる。

消息:書簡や書状のこと。平安、鎌倉時代の僧侶や天正年間以後の茶入の書状など。

唐画:中国の宋、元の時代の画家によって描かれたもので、花鳥山水等を描いている。水墨画は、宋時代に僧侶や文人たちによって墨のもつ味わいを利用して描かれたもの。
<花入>
 茶席に生けた茶花を飾る器。茶席の床に置く場合と床柱に掛ける場合がある。また掛物を外し、床の中央部に掛ける場合もある。
 花入れには竹、籠、金属、焼き物(陶磁器、陶器)でできたものがある。

:安土桃山時代の利休の時代から青竹を切って花入れとして用いるようになった。

:唐物籠と和物籠がある。千利休は漁夫の魚籠から花入れをつくったという逸話もある。

金属:唐物の古い銅(中国の宋時代の銅器)の唐銅(からかね)が有名。他にも銅とすず、鉛の合金で作られた砂張(さはり)などがある。

焼き物:陶磁器(古く中国、朝鮮から入った青磁)や陶器(外来のものと国内各地の窯で作られたもの)を用いる。中でも青磁花入れは最も格調高いものとされている。※焼き物の種類
  
      ひさご花入れ     信楽焼き花入れ
<香合>
 炭点前の時、香をたく為その香を入れるもの。「塗り物」、「木」、「竹」、「焼き物」、「貝」等がある。風炉には塗り物、木、竹などを用い、炉には焼き物などを用いる。但し、ものによっては風炉、炉ともに使えるものもある。また、香合には大きいブリブリ香合などもある。
       風炉用香合       炉用香合

 香:茶室にたいてその香を賞する。木や煉り物がある。
   木香・・・沈香、伽羅、白檀 等
   煉香・・・梅ヶ香、紫舟、待従、黒方 等
<釜>
 湯を沸かす道具。炉用、風炉用がある。一般的に大ぶりのものが炉用、小ぶりのものが風炉用である。また、季節によって使われる透木、くさりで釣った釣り釜用のものもある。その種類はその形から「真形(しんなり)釜」「丸釜」「裏甲釜」「四方釜」「筒釜」「透木釜」「鶴首釜」「富士釜」「茶飯釜」「平釜」などがある。百陀、筋など地紋のあるものや針屋、万代屋(もずや)など所持者の名前のついたもの、「残月」「紫野」「阿弥陀堂」「園城寺」等故事や作法の名のついたものもある。また、千家の釜師(十職)は大西家である。

代表的な産地

 福岡県の芦屋釜(筑前の国)・・・・・室町時代
 栃木県の天明釜(下野の国)・・・・・芦屋より多少時代が下がる。
 京都府の京作釜・・・・・・・・・・・・・・安土桃山時代、信長時代の西村道仁、秀吉の釜師、辻与次郎 など
 他にも関東釜などがある。
<風炉>
釜をかける火鉢。茶道では5月〜10月の春と夏に用いられる。鎌倉時代の初期に仏具の台子と共に中国から入ってきたのが由来。風炉には「唐銅風炉」「土風炉」「鉄風炉」などがある。敷板には焼き物と木の板(小板、大板)があり、それにのせて使われる。
<水指>
 釜の湯が足りなくなった時に補ったり、茶碗や茶筅をすすぐための水をいれておくもの。金属、焼き物、木竹工品、ギヤマン(ガラス)の等の種類があり、形も様々である。夏は水がたくさん見え、涼しさを感じさせるような平水指やつるべ等を用い、名残りの季節(9月下旬から11月下旬)には細水指等が使われる。季節や棚やその他合わせる道具などによって変化する。また、水指の蓋には水指と同じ材質の共蓋と水指とは異なった材質の替蓋がある。

      共蓋水指   替蓋水指

              割蓋水指

水指の材質
 金属:古銅、砂張、七宝がある。
 焼き物:青磁、染付、呉須、色絵、祥瑞(しょんずい)、安南(あんなん)
      宋胡録(すんころく)、紅毛(おらんだ)、南蛮、高麗、信楽、
      伊賀、備前、丹波、瀬戸、志野、織部、唐津、高取、京焼、
      楽焼などがある。
 木竹工品:手桶、釣瓶(つるべ)、木地曲(きじまげ)、片口(かたくち)
       などがある。
 ギャマン:ガラスでつくられたもの。

       ギャマン水指

       手桶の水指  つるべ水指
<茶入>
 濃茶の茶器。「唐物茶入」「瀬戸茶入」「国焼茶入」「名物茶入」などがある。また茶入には有名な裂地の仕覆(袋)をつける。仕覆にも「金襴類(きんらんるい)」「緞子類(どんするい)」「間東類(かんとうるい)」などの種類がある。また、茶入れは「唐物」「和物」など種類によって扱い方が異なる。

        仕覆と茶入れ    瀬戸焼茶入れ

        一閑張りの平棗
<薄茶器>
 漆器の薄茶をいれる容器。「黒塗」「朱塗」「溜塗」「蒔絵が描かれたもの」「木地のまま」「一閑張り」「陶磁器」などがある。形もいろいろであるが、一般的に有名なのが棗である。

       秋乃棗        正玄棗
<茶杓>
 茶をすくう匙のこと。象牙、竹、鼈甲、木などがある。節の位置により真、行、草の三種類に分かれている。竹の茶杓は行(中節)が一般的であり、利休が考案したと言われている。材質や形、大きさによって使い方が異なことがある。また、茶杓には茶杓を入れる筒がある。宗旦以後には共筒等が多く見られるようになる。

                    上:塗り茶杓 下:すす竹茶杓
※参考
真:節の無いもの。象牙、竹の無節
行:茶杓の真中に節があるもの。竹の止め節
草:茶杓の手元に節のあるもの。竹の中節、桜や梅など木でできたもの。
<茶碗>
 お茶を飲むための器。中国や朝鮮から来た「唐物」と日本で作られた「和物」がある。和物の中でも楽焼が特別に扱われている。これは千利休が朝鮮から帰化した陶工「あめや」を指導して、お茶に合う茶碗をつくらせたものだからである。
楽茶碗歴代の陶工は今でも十職として特別に扱われている。ちなみに楽茶碗には赤と黒がある。

           赤楽茶碗
<蓋置>
 釜の蓋や柄杓を置く道具。竹(節の位置により風炉用【天節】、炉用【中節】となる)、焼き物、金属製、木などがある。種類は数多くあるが、中でも有名なものとして千利休が選んだ7種類の「火屋(穂屋)」「五徳」「三つ葉」「一閑人(いっかんじん)」「さざえ」「三つ人形」「蟹」の蓋置がある。
         
           7種類の蓋置
                       
        風炉用の竹蓋置き     炉用の竹蓋置き
<建水> 
 茶事の際、湯水を捨てる器のこと、こぼしともいう。焼き物、木、唐銅、砂張などの金属がある。

 焼き物:大樋焼、備前焼、黄瀬戸焼、信楽焼、高取焼、丹波焼 など
 木地:曲げの建水 など
 金属:砂張(銅、すず、鉛の合金)、モール(銅、すずの合金)、唐銅 など
焼き物建水 曲げの建水(左:塗り 右:白木) 唐銅建水 モール建水 砂張建水
              
<菓子器>
 茶事のさい、主菓子をのせる器。材質には焼き物と塗り物がある。一般的には焼き物は風炉の時期に塗り物は炉の時期に使う。
 また、あらたまった折に使われる縁高、朱三足高杯(たかつき)などや蓋のある食籠(じきろう)もある。

  縁高    塗り物食籠(じきろう)   焼き物食籠(じきろう) 
<干菓子器>
 茶事のさい、干菓子(薄茶用のお菓子)をのせる器。材質には塗り物、金属製、木、竹などがある。蓋の無いものもあり、形もさまざまである。 

        高杯
<棚>
 広間の時に使う。大棚や小棚、形もいろいろあり、ものにより点前も少しずつ異なる。

例.
   紹鴎棚(大棚)  

   糸巻棚(小棚)   丸卓(小棚)
<その他>
 
他にも、茶をかき混ぜる道具としての「茶筅」や釜から湯をくみ上げる際の道具「柄杓」や「炭とり」「羽ぼうき」「火箸」「釜敷」「灰器」などの道具がある。

 茶筅:茶を点てる際にかき使う道具。茶の湯では、これを使って抹茶を湯にかき混ぜる。





 柄杓:竹で作られたお湯を杓う道具。大きいほうが炉用、小さいほうが風炉用


 
 炭とり:炭点前の折、炭を入れておくもの。籠(藤、竹、つる)。炭台は正月やあらたまった時に小奉書を敷いて使う。元伯好みの一閑折敷(おりすえ)、口切の頃に新瓢を切って使う「ふくべの炭とり」などもある。
           
      炭とり(風炉用    炭とり(炉用)

 羽ぼうき:炉、風炉を清めるためのもの。鷹、白鳥、鶴、梟、鷲 などで作られ、左羽、右羽とがあり、左側の広いほう(左羽)が炉用、右側の広いほう(右羽)が風炉用となっている。その他、勝手用のものや座ぼうき等がある。



 火箸:炭をとる道具。鉄のもの(写真左)が風炉用、木の柄が付いている(写真右)のが炉用に分かれている。その他、飾るための飾り火箸、半田ほうらく用に使われる長火箸などもある。




 灰器(写真左):炉や風炉の灰を清める化粧灰を入れる器。炉用、風炉用がある。写真の素焼きは炉用。くすりがかかったものが風炉用となっている。尚、大きさや焼きによって炉、風炉共に使えるものもある。炉の炭点前には必ず使用する。風炉は土風炉の時のまき灰用に使用する。
 灰さじ(写真右):灰をまくときに使う道具。炉、風炉用がある。写真は炉用で大きく柄も桑や南鐐等がある。風炉は匙も小さく柄も長く竹で巻いてある。

 炉縁:炉を作る際、畳を切って中に炉壇を入れてその上に畳と同じ厚さの枠を入れる。それを炉縁という。小間用と広間用(四畳半以上)に分かれる。小間用は木地を使い、広間用は塗り物、鎌倉彫などを使う。



 扇子、懐紙:茶席に入る際の必需品。懐紙はお菓子を取り置く際や茶碗を拭くときなどに用いる。




 点前用帛紗:点前をする際に使う帛紗。茶杓や棗などを拭く。無地の塩瀬が使われる。



 出し帛紗:濃茶の折、茶碗に添える帛紗。濃茶入れの仕覆と同様の材質が多い。古代製や家元好みのものなどさまざまである。



風炉先(びょうぶ):席中の点前畳と客座や通い畳の境を定めるためのもの。広間で使う。炉、風炉の区別は無いが、夏は涼しげなもの冬はあまり風を通さないものを使う。

敷板:風炉点前では、風炉を畳に直に置かず板や陶器を敷いて熱を遮断する。このときに敷く板や陶器のこと。荒目板、鉋目(かんなめ)板があり、共に四角と丸板がある。鉄風炉は熱の通りが良いため焼き物(信楽、志野、大樋など)を使う。

鐶:釜を動かす時に使う釜の脇につけるもの。

釜敷:釜を置く時に下に敷くもの。

トップページへ
 Copyright © Nomura.All rights reserved.